2017年大学入試センター試験問題

倫理

倫 理

(解答番号

 

  

 

 

第 1 問
以下は大学生 A と B の会話である。これを読み、下の問い(問1 ~ 10)に答えよ。(配点 28)

 

A:最近話題の映画を観に行ったけれど、 a 命の尊さ っていうテーマはいいのに、中身はいろんな名作を継ぎ接ぎしただけで、がっかりしたなあ。
B:継ぎ接ぎ自体は悪くないと思うよ。何をどこから選んでくるのか、それをどうアレンジするのか、そのアイディア自体はオリジナルなんだから。
A:それでも、他人のアイディアに頼っていることには変わりないよ。できあいのアイディアに頼らずに、自力で頑張った人間だけが、しっかりした b 自己を確率することができる。そういう人が c 芸術家 になれるんだと思うな。
B:個人の力を過信しているなあ。使えるものは何でも使うべきだよ。例えば、映像でもサウンドでも、テクノロジーの力を借りれば表現の幅も(ひろ)がるしね。
A:規格化されたテクノロジーに頼っていたら、型にはまった発想にしかならないよ。その現実から d 逃避 していたら、真の芸術なんて生まれないよ。
B:真の芸術かどうかなんて、どうでもいいよ。いい作品だったら e インターネット なんかでも評判が拡がっていくだろうし、それで十分じゃないのかな。
A:ネットでは独り言をつぶやくか、仲間内で馴れ合っているだけでしょ。自分と考えの違う人たちとも、意見をやりとりすることが大事だと思うな。
B:だからこそネットをもっと使うべきじゃないの?ネット上なら世界中の人と意見を言い合えるんだから、とっても f 民主的で、いいと思うけれどね。
A:いや、ネットで流れている評判は、そう簡単には信じられないなあ。実際個性のない作品であっても、結構たくさんの人たちに受けたりするわけだから。
B:同じ g 世代なのに頭が堅いね。受け手を h 大衆 と見下すべきじゃないよ。作品に意味を与えるのは受け手だし、受け手の役割は思った以上に大きいよ。
A:たいていの人は、 i メディアから情報を受け取って消費している だけだよ。
B:消費しているだけでも目は肥えていくし、優れた作品に刺激されて自分が作り手になることもある。そういう可能性をもっと考えてもいいと思うな。

 

問1 下線部 a に関連して、生命の価値についてSOL(Sanctity of Life)とQOL(Quality of Life)という考え方がある。SOL と QOL に関する記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① SOL を重視する立場によれば、人間の生命には質的な差異はなく、いかなる人間の生命も絶対的に尊重されねばならないので、重篤な患者であっても安楽死や尊厳死は認められない。

 

② QOL を重視する立場によれば生命の質が何よりも尊重されるべきであのつとるので、医師は、患者自身の意向に左右されずにパターナリズムに則って治療にあたらなければならない。

 

③ SOL を重視する立場によれば延命治療に関して患者が事前に表明した意思(リヴィング・ウィル)が尊重されるべきであり、医師はそうした患者の意向に従わなければならない。

 

④ QOL を重視する立場によれば、各人の生命には絶対的な尊厳が認められねばならないので、生命の価値に優劣の差は存在せず、生命の価値を定めるのは当の個人でなければならない。


 

問2 下線部 b に関連して、次の ア ~ ウ は、自己の確立について考察した人物の説明である。その正誤の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア 小此木啓吾は、一人前の人間として自立することを回避して大人になろうとしない青年期の人間を、「モラトリアム人間」と呼んだ。

 

イ アリエスは、自立を図ろうとするあまり自己主張が強くなって大人と貨籍 を起こすような青年期の人間を、「小さな大人」と呼んだ。

 

ウ アドラ は、子どもと大人の集団の境目に位置していて心理的に不安定になりがちな青年期の人間を 「マージナル・マン」と呼んだ。

 

① ア 正  イ 正  ウ 正

 

② ア 正  イ 正  ウ 誤

 

③ ア 正  イ 誤  ウ 正

 

④ ア 正  イ 誤  ウ 誤

 

⑤ ア 誤  イ 正  ウ 正

 

⑥ ア 誤  イ 正  ウ 誤

 

⑦ ア 誤  イ 誤  ウ 正

 

⑧ ア 誤  イ 誤  ウ 誤


 

問3 下線部 c に関連して、次の ア ~ ウ は、美術の分野で活躍した芸術家の作品と思想についての説明であるが、それぞれ誰のものか。その組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア 代表作「春」、「ヴィー ウナスの誕生」などで、躍動する生命と自由に生きる人間の美を生き生きと描き出し、人文主義の精神を体現した。

 

イ 坐禅で得た寂静の境地を表現したとされる山水図などの作品で、墨の濃淡だけで枯淡や幽玄の美を描き、水墨画を日本において大成した。

 

ウ ナチス ・ ドイツによる 一般市民への無差別爆撃を描いた壁画「ゲルニカ」を、発表し、人類の引き起こす戦争の悲惨さや残虐さを告発した。

 

セザンヌ 尾形光琳 ゴーギャン
セザンヌ 尾形光琳 ピカソ
セザンヌ 雪 舟 ゴーギャン
セザンヌ 雪 舟 ピカソ
ボッティチェリ 尾形光琳 ゴーギャン
ボッティチェリ 尾形光琳 ピカソ
ボッティチェリ 雪 舟 ゴーギャン
ボッティチェリ 雪 舟 ピカソ


 

問4 下線部 d に関連して、防衛機制としての逃避に当てはまる事例として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 本当は好意をもっているクラスメートに、わざと意地悪なことを言ったり、無関心を装って冷たい態度を取ったりする。

 

② 溺愛していた一人息子が海外留学に出かけてしまって寂しくなった夫婦が、代わりに小犬を飼うことで心の隙間を埋めようとする。

 

③ 自分がいつまでもレギュラー選手になれないのは、自分のせいではなく、選手の実力を把握できていない監督のせいだと考える。

 

④ 部活動が苦痛になってきた生徒が、普段は何ともないのに部活動の時間が近づくと体調を崩し、このところ部活動を休んでいる。


 

問5 下線部 e に関して、次の図は、平成25年の1年間にインターネットを利用した成人について、世代別利用目的・用途をまとめたものである。図から読み取れることとして最も適当なものを次ページの①~④のうちから一つ選べ。

 

① 当てはまると回答された割合を表す数値は、すべての世代で、項目エが最も低く、2番目に低いのが項目ウ、3番目が項目 イ であり、項目 ア が最も高い。 このことから、いずれの世代でも、遊び・娯楽以外でインターネットを利用する傾向が強いと言える。

 

② 当てはまると回答された割合が最も高い項目 ア と最も低い項目 エ の間の数値の差は、20~29 歳、30~39 歳、40~49 歳、50~59 歳、60 歳以上の順に 大きくなっていく。 このことから、世代が高くなるにつれて、インターネットの利用目的・用途が特定の項目に集中していくと言える。

 

③ 40~49 歳、50~59 歳、60 歳以上のいずれの世代でも、項目 ア を除き他の 3 項目の数値が 50 %未満である。 このことから、これら三つの目的・用途での利用者の割合が少ない 40 歳以上の各世代でも、インタ ーネット利用者の半数以上が電子メールを利用していると言える。

 

④ 30~39 歳、40~49 歳、50~59 歳、60 歳以上の世代では、項目 イ の数値と項目 ウ の数値が、いずれも項目 エ の数値の2倍以上となっている。 このことから、30 歳以上の各世代では、インタ ーネット利用者の間で、芸術や社会の動向に注目する傾向が強いと言える。


 

問6 下線部 f に関連して、民主化と平等の進展がもたらす問題点について政治思想家トクヴィルが論じた次の文章を読み、その内容の説明として最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

 

境遇がすべて不平等であるときには、どんなに大きな不平等も目障りではないが、すべてが斉一ななかでは最小の差異も衝撃的に思える。完璧に斉一になるにつれて、差異をみることは耐え難くなる。平等への愛着が平等そのものとともに増大するのは、だから当然である。…民主的な国民は、こうして最小の特権にも憎悪の念を募らせつづけ、これに反対せずにはいられない。しかし、奇妙なことに、この憎悪の念に後押しされて、あらゆる政治的権利が国家の唯一の代表者の手に次第に集中するようになる。この主権者(権力者)は当然あらゆる市民のうえに立つ存在であり、いかなる市民の嫉妬をかうこともない。同等の者たちから特権を奪って、それをすべてこの主権者に預けるのを、誰もがよしとする。民主的世紀の人間は、自分と同等の隣人に従うことに、極度の嫌悪感を覚えざるを得ない。

(『アメリカのデモクラシー』より)

 

① 各人のおかれた境遇の平等が進むにつれ、人は他者との小さな差異に拘泥し、自分と異質な人を憎悪して視野から排除するようになるが、自分自身が権力者に支配されること自体は、ことさら疑問に思わないようになる。

 

② 民主化が進展して各人の境遇が平等になると、かえって人は他者との差異が気になり、自分以外の人が自分と同等であることを憎悪するようになるので、権力者がその人たちから権利を奪うことをよしとするようになる。

 

③ 各人のおかれた境遇の平等が進むにつれ、人は他者との差異に敏感になり、万人の完全な平等を追い求めるようになるが、同等の人間に支配されるのを忌避するあまり、強大な権力の支配に進んで身を委ねるようになる。

 

④ 民主化が進展して各人の境遇が平等になると、人は自己と他者の差異を手がかりにして、自分と同等の人だけを自分の隣人として認めるようになり、権力者に特権が集中することになっても気にならないようになる。


 

問7 下線部 g に関連して、現在世代と将来世代とのあるべき関係をめぐる考え方についての説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 持続可能な開発(発展)という理念によれば、現在世代の人々は自分たちの欲求の充足をできるだけ抑制し、将来にわたって高い経済成長率が確実に維持されるよう努めなければならない。

 

② 持続可能な開発(発展)という理念によれば将来世代の人々の享受すべき利益を損なうことなく、しかも現在世代の人々の欲求をも充足させるような開発が目指されなければならない。

 

③ 世代間倫理という考え方によれば、現在世代の活動とまだ生まれていない将来世代の活動とは互いに密接に絡み合っているので、両世代の人々は相互に責任や義務を負わなければならない。

 

④ 世代間倫理という考え方によれば、現在世代はまだ生まれていない将来世代に対して責任を負う必要はなく、自分の世代の問題については同世代の人々の間で責任を分担しなければならない。


 

問8 下線部 h に関して、次の文章は、大衆社会をめぐる問題について説明したものである。文章中の

に入れる語句の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

19世紀以降にデモクラシーが拡大するに伴って、大衆社会をどう評価するかが思想上の課題となる。例えば、平均化・画ー化された人間に

を対置したキルケゴールは、大衆社会批判の先駆けの一人でもあろう。彼は、世間の風潮に流される生き方を(しりぞ)け、人は究極的には神の前の

として生きなければならないと考えたのだった。一方、20 世紀にはフランクフルト学派によって、ファシズムを支える大衆の

的な性格(パーソナリティ)が問題視されたが、それと同時に娯楽映画やポピュラー音楽などの大衆文化も、こうした状況を助長するものとして批判された。アドルノらによれば、規格化された大衆文化を漫然と消費している限り、人間の意識は画らだ。とはいえ、ホイジンガの言うように

に文化の根源があるのだとすれば、芸術活動を一切排除した生もまたあり得ない。大衆社会状況のもとで芸術文化の可能性を探ることは現代の重要な課題の一つだと言えよう。

 

a 超越者 b 権威主義 c 工 作
a 超越者 b 権威主義 c 遊 び
a 超越者 b 全体主義 c 工 作
a 超越者 b 全体主義 c 遊 び
a 単独者 b 権威主義 c 工 作
a 単独者 b 権威主義 c 遊 び
a 単独者 b 全体主義 c 工 作
a 単独者 b 全体主義 c 遊 び


 

問9 下線部 i に関連して情報社会や消費社会をめぐる問題についての説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ボードリヤールによれば消費社会のなかで人々は、メディアから提供される情報を手がかりにしながら、もっばら有用性の観点から商品を購入し、ただ大量に消費することそれ自体を目的としている。

 

② リップマンによれば、人々はメディアの情報から一定のイメージを思い浮かべ、それに従って現実を理解しているので、メディアによって情報が意図的に操作されると、世論が操作される危険がある。

 

③ ブーアスティンによれば現代のメディアが提供しているのは、物語としての迫真性をそなえた「本当らしい」出来事にすぎず、視聴者の側はメディアから流される情報に関心をもたなくなっている。

 

④ マクルーハンによれば近代社会では活字メディアが支配的だったが、20世紀に入って映画やテレビのようなメディアがそれに取って代わった結果、人間の感覚や想像力は貧困なものになっている。


 

問10 本文の内容に合致する記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① Aは、テクノロジーの力を借りて優れた芸術作品を生み出すことは難しいと考える。また、Aによれば芸術作品の優劣を左右するのはもっばら作り手であり、多くの受け手は作品を消費する存在にすぎず、そうした受け手の受動的な心性を助長するメディアは過信すべきではない。

 

② Aによれば、他者の手を借りずに自らの力でオリジナルな発想を獲得することこそが、優れた芸術作品の必要条件となる。それゆえ、Aは、個々人が自己の内面を見つめ、それを作品へと結実させることが肝心だと考え、他者と意見を交換し合うことには積極的な意義を認めない。

 

③ Bは、テクノロジ一のもたらす新たな表現を肯定し、そこに優れた芸術作品が生まれる可能性を見いだす。また、Bによれば、インターネットなどのメディアに流れる意見のなかには優れた意見もあり、そうした少数意見の持ち主こそが芸術の能動的な担い手になることができる。

 

④ Bによれば、たとえ他者の発想を借りたとしてもオリジナルな芸術作品を生み出すことは可能であり、むしろ他者の力を借りることで芸術の可能性は拡がっていく。また、Bは、ある作品が真の芸術と言えるかどうかについては、多くの人々の意見を集約することで判定できると考える。


 

 

第 2 問
次の文章を読み、下の問い(問1 ~ 9)に答えよ。(配点 24)

 

私たちの生きる現実の社会は、貧困や差別など、様々な問題を抱えている。私たちはそのなかでどのような生を模索すればよいだろうか。先哲の思想を通じて考えてみよう。先哲の思想のなかには現実に存在する社会階層や a 貧富 の差を越えて、人間の救済を説く思想があった。イエスは、軽蔑されていた徴税人や罪人を分け隔てせず、 b 神 からの救いの可能性は万人に等しく与えられていると唱えた。イエスの思想は、弟子たちの活動を通じて、社会階層や民族の違いを越えて広く受け入れられていった。また、 c ムハンマドが授かったクルアーン(コーラン)の教え は、血縁を重視する部族社会の枠組みを越えたものであり、唯一神に帰依した人々は、家柄や貧富にかかわらず、神の前では誰もが平等だとするものであった。さらに、 d インド においては、ブッダが生まれに基づく身分制を批判し、出自よりも、何を行っているかが重要だと説いた。仏教では、悟りを得る可能性を出身階層で限定しようとしなかった。これらの思想は、貧困や差別の残る社会にありながらも、それを超えた視点で人々を平等に扱い、よりよい生や社会を模索するものであった。一方、人間が社会のなかで果たすべき役割について考察する思想もあった。プラトンは、ソクラテスが死刑に処せられたことに代表される現実政治の問題点を指摘し、正義を具現する e 国家を構想した。そして、その実現のためには、 f 哲学者 が統治者となり、国を防衛する者と生産に従事する者とともにそれぞれが当人に適した仕事を果たすことが必要だと主張したのである。また、孟子は、心を尽くして政治を行う君主と力を尽くして働く民との役割分担を説き、 g 仁 と義に基づく王道政治を理想として、民を虐げる政治を批判した。さらに、君主は h 家族 のいない老人など弱い立場の人々にも配慮すべきだと説いた。これらの思想は、理想に基づいて現実の政治のあり方を批判し、より調和のとれた社会を目指している。現実を超えた次元の救いに自身の生きる意味を見いだすにせよ、社会全体の理想的な調和の実現を目指していくにせよ、先哲は現実を広く見渡す立場から、よりよい生のあり方を提示した。先哲の思想が今なお示唆的なのはいずれも現実世界に対する深い反省を踏まえ、社会が抱える様々な問題に触れているからであろう。

 

問1 下線部 a に関連して、金品の所有や利得の追求についての教えや思想の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ソクラテスは、魂を優れたものにするよう配慮しさえすれば、金銭をできるだけ多く自分のものにしようとする欲求は自然と満たされる、という福徳一致の考えを示した。

 

② イスラム教では、あらゆるものは究極的には神の所有物とされるが、人にはそれを用いる権利が与えられており、貸した金から利子を得ることも広く認められていた。

 

③ ユダヤ教では、神からモーセに授けられた十戒を遵守することが求められその十戒のなかには、盗みを禁じる規定や、隣人の家を欲することを禁じる規定があった。

 

④ 仏教では、所有欲が執着として否定され欲しいものが得られないという苦悩は、所有欲があるから生じるのであり、執着を絶つためには徹底した苦行が必要であるとされた。


 

問2 下線部 b に関連して、神と教会についてのアウグスティヌスの考えとして最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 教会が指導する聖書研究を通して信仰を深めることにより、神の恩寵を得ることができると考えた。

 

② 人は神の恩寵によらなければ救われないと主張し、教会は神の国と地上の国を仲介するものだと考えた。

 

③ 教会への寄進といった善行を積むことにより、神の恩寵を得ることができると考えた。

 

④ 人は神の恩寵によらなければ救われないと主張し、贖宥状の購入による救済を説いた教会の姿勢は間違っていると考えた。


 

問3 下線部 c に関して、次の ア ~ ウ は、イスラーム教についての記述である。 その正誤の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア イスラーム教世界の最高指導者であるカリフは、神から啓示を授かる預言者であると同時に、ムハンマドの後継者とみなされた。

 

イ 預言者ムハンマドによって率いられたウンマは、宗教的ウンマと政治的ウンマに分かれていた。

 

ウ 預言者ムハンマドも人間であるとされ、イエスもまたムハンマドに先行する預言者であって、神の子ではないとされた。

 

① ア 正  イ 正  ウ 正

 

② ア 正  イ 正  ウ 誤

 

③ ア 正  イ 誤  ウ 正

 

④ ア 正  イ 誤  ウ 誤

 

⑤ ア 誤  イ 正  ウ 正

 

⑥ ア 誤  イ 正  ウ 誤

 

⑦ ア 誤  イ 誤  ウ 正

 

⑧ ア 誤  イ 誤  ウ 誤


 

問4 下線部 d に関連して、古代インドで展開された思想についての記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ウパニシャッド哲学は、真の自己とされるアートマンは観念的なものにすぎないため、アー トマンを完全に捨てて、絶対的なブラフマンと一体化するべきであると説いた。

 

② バラモン教は、聖典ヴェーダを絶対的なものとして重視していたため、ヴェーダの権威を否定して自由な思考を展開する立場を六師外道と呼んで批判した。

 

③ ウパニシャッド哲学では、人間を含むあらゆる生きものが行った行為、すなわち業(カルマ)の善悪に応じて、死後種々の境遇に生まれ変わると考えられた。

 

④ バラモン教では、唯ーなる神の(まつ)り方が人々の幸福を左右するという考えさいしつかさどに基づいて、祭祀(さいし)(つかさど)るバラモンが政治的指導者として社会階層の最上位に位置づけられた。


 

問5 下線部 e に関連して、次の文章は、ポリス(国家)が全盛期を過ぎた後のギリシア・ローマ世界の思想についての記述である。

に入れる語句の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

アレクサンドロス大王の東征を機に、ギリシア文化が東方の文化と混じり合うようになると、ヘレニズム文化が誕生した。こうした諸文化の混交を経て成立したストア派からは

の思想が提示された。宇宙のロゴス(理性)に従って生きる人は、都市国家の枠組みを越えて、みな同胞であるという主張がなされたのである。この考えは、近代の

思想の成立に影響を与えることになる。ストア派は宇宙の理法を神として捉えたが、一方で、

を代表とする新プラトン主義は、神を超越的なを説いた。それはギリシア思想の有する合理的な精神に、神秘主義的な観点を接合するものであった。

 

a 世界市民主義 b 自然法 c セネカ
a 世界市民主義 b 自然法 c プロティノス
a 世界市民主義 b 実定法 c セネカ
a 世界市民主義 b 実定法 c プロティノス
a 地球全体主義 b 自然法 c セネカ
a 地球全体主義 b 自然法 c プロティノス
a 地球全体主義 b 実定法 c セネカ
a 地球全体主義 b 実定法 c プロティノス


 

問6 下線部 f に関連して、古代ギリシア・ローマにおける哲学者についての記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ヘラクレイトスは、万物の根源を火であるとしたうえで、「万物は流転する」と唱え、その絶えず変化する様子に法則性は認められず、調和した秩序は見せかけのものにすぎないと主張した。

 

② パルメニデスは、論理的思考に基づいて、在るものは常に在ると説き、世界における変化や生成は見かけだけの現象にすぎず、存在するものはただ一つであって、生成も消滅もしないと主張した。

 

③ プラトンは、この世に生まれた人間の魂を、感覚の世界に囚われ、イデアを忘却してしまったものと考え、イデアの世界はいかなる手段によっても知ることができないとする二世界説を唱えた。

 

④ マルクス・アウレリウスは、ローマ皇帝であると同時に、自らも哲学を修め、この世の現象は原子の不規則な動きによって構成されているという原子論の考えを発展させた。


 

問7 下線部 g に関連して、次の文章は、16 世紀末から 17 世紀初頭にかけて中国で布教した宣教師マテオ・リッチが、万物一体の仁を説く同時代の儒者の考えに対して応答した一節である。そこで論じられている内容の説明として最も適当なものを下の①~④のうちから一つ選べ。

 

君子は物に対しては これを愛しますが仁しみません*。今、(民や親族を含めて)他人一般に対して一体であるとするならば必ず等しくこれを(いつく)しむべきであるということになります。墨子が他人を兼ね愛したことに対して、昔の儒者はこれを非として論弁しました。今、土や泥をも仁しむことを勧めて、今の儒者が是としてこれに従うのは、何ということでしょうか。天主が天地万物を造られましたが、その万物のあり方は様々であって、根源は同じで種類が異なっていたり、種類は同じで性質が異なっていたり、性質は同じで作用が異なっていたりします。今、これをむりやり一体にしようとするならば造物者の意志に逆らうことになります。

(『天主実義』より)

*君子は……仁しみません:物、民、親族に対して、それぞれ異なる親密さで接するべきだと説く孟子の言葉を踏まえている。

 

① 兼愛を説く墨家の思想は正しく、根源を等しくする万物を平等に扱う天主の教えと合致している。

 

② 人と物とで対応を変える昔の儒者の考えは間違っており、万物の一体を説く今の儒者の考えに及ばない。

 

③ 万物に対して等しく仁で接するべきだとする今の儒者の考えは正しく、万物が一体であると唱える天主の教えと合致している。

 

④ 万物の一体を説く今の儒者の考えは間違っており、墨家の兼愛説を批判していた昔の儒者の立場を離れるものである。


 

問8 下線部 h に関して、儒家の家族観についての記述として適当でないものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 孔子は、祖先に対する祭祀儀礼を批判し、生存している自分の父母や家族を最優先に考えるべきだと説いた。

 

② 『論語』では、父母に対する孝や兄に対する悌といった徳目が軍視され、それらが仁の根幹であると説かれている。

 

③ 孟子は、基本的な人間関係を五倫としてまとめ、「父子」の間には「(しん)」という関係が成立すると説いた。

 

④ 朱子学では個人の修養や国家の安定などとともに家族・親族の人間関係をうまく取り仕切る「斉家」の実践が要請された。


 

問9 本文の趣旨に合致する記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 先哲の思想のなかには、差別の残る現実社会の次元を超えた平等を説く思想もあれば理想に基づいて社会的な調和を説く思想もあった。 いずれの思想においてもその目標がこの世では実現できるはずもないことが当初から理解されており、現実を超えた世界でのみ可能になると説かれていた。

 

② 先哲の思想のなかには、万人の平等を提唱し、現実社会の貧困や差別を根本的になくさない限り、救済は成立しないとする思想がある一方、社会を構成する者たちの役割分担を強調して、現実の政治の歪みを正そうとした思想もあった。 いずれの思想においても現実に対する批判が根底にある。

 

③ 先哲の思想のなかには、救済は現実を超えた世界において人々に平等に与えられると考えた思想がある一方、現実において理想を追求し、調和のとれた社会を構想する思想もあったいずれの思想においても神や統治者に、批判を差し挟むことなく従うことが必要とされた。

 

④ 先哲の思想のなかには差別の残る現実社会の次元を超えた平等を説き、よりよい生のあり方を提示する思想もあれば社会を構成する者たちの役割分担を考え、調和のとれた理想的な社会を模索する思想もあった。いずれの思想においても現実社会の諸問題を見すえた思索が展開されている。


 

 

第 3 問
次の文章を読み、下の問い(問1 ~ 9)に答えよ。(配点 24)

 

日本では、広く外来の思想や文化が受容されてきたが、人々はそこからさらに、自国にとどまらず、他国とも共有し得る様々な思索を展開し、新たな知見を生み出してきた。ここではそうした先人たちの思想的営みを振り返ってみよう。6 世紀ころに a 伝来した仏教 は、奈良時代には、朝廷のもとで国家を鎮護するという役割を担っていた。平安時代になると、 b 誰もが仏になれるという考え に基づき個人の救済が重視されるようになった。こうしたなかで、源信は『往生要集』を著し、外来の数多くの仏典に依拠しつつ、地獄や極楽の様相を描き出し、浄土への往生を説く教えこそがすべての人にとってふさわしいと論じた。『往生要集』は宋にも伝えられたがそうした動きには、仏法のもとではすべての人が平等であるとし、 c 万人の救済 を願う源信の考えも影響を与えていた。江戸時代には、世界や人間のあり方を体系的に説いた d 朱子学 が、現実の秩序を重視する人々に広く学ばれるようになった。このような朱子学を批判した荻生祖棟は、古代中国の聖人が天下を安定させるために制作した道に、儒学の本質があると考え、それを学ぶ方法として e 古文辞学を唱えた。この方法により、海を越えて異国の地でも評価される『論語』解釈が生み出された。また、古文辞学は、文献の厳密な考証・校訂を尊ぶ気運を醸成し、 f 古典 の発見を促した。こうした動きのなかで、中国では散逸した書が日本で見いだされ、清の知識人にも注目された。近代に至り、仏教や儒学とは異なる g 西洋の思想や文化 が本格的に紹介され、西洋文明を称賛する風潮が生じた。岡倉天心は、幼少より英語を学び、西洋の文化にふれつつも、東洋に対する西洋人の無理解に警鐘を鳴らし、西洋・東洋に共有されている価値観を探究した。英文で著した『茶の本』において天心は、西洋でも尊重されている茶に注目し、道家や禅の思想を基に形成された日本の茶道の本質を、 h 日常生活 のなかにある美を崇拝する営みに見いだした。先人たちは、外来の思想や文化を一方的に受容するだけではなく、それらの捉え直しや批判的検討を通して、日本という場にとどまらず、他国とも共有し得る多様な思索を展開してきた。こうした営みは、グローバル社会のなかで生きる一つの指針を私たちに示しているのではないだろうか。

 

問 1 下線部 a に関連して、仏教が伝来することによって生じた、仏と在来の神との関係についての説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 仏教が伝来した当初、仏は、異国から到来した神と認識され、人々に利益や災厄をもたらすと考えられた。平安時代になると、神は仏が人々を救済するために現れた仮の姿であるという考え方が生まれた。

 

② 仏教が伝来した当初、仏は、当時の人々が唯 絶対の貴い神と考えていたアマテラスと対立する存在とみなされた。平安時代になると、仏はアマテラスが人々を教化するために現れた化身であるという考え方が生まれた。

 

③ 仏教が伝来した当初、仏は、異国から到来した神と認識され、人々に利益や災厄をもたらす存在であると考えられた。平安時代になると、仏は神が人々を守護するために現れた仮の姿であるという考え方が一般化した。

 

④ 仏教が伝来した当初、仏は、当時の人々が不可思議な現象や存在として捉えた神々と同様のものであると考えられた。平安時代になると、仏と神は異なる国に誕生した対立する存在であるという考え方が一般化した。


 

問2 下線部 b に関して、誰もが仏になることができる根拠として最澄が尊重した言葉がある。その言葉として正しいものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 厭離穣土 欣求浄土

 

② 即身成仏

 

③ 一切衆生 悉有仏性

 

④ 則天去私


 

問3 下線部 c に関連して、次の ア ~ ウ は、人々を救いに導く新しい教えを説いた鎌倉時代の人物について説明したものである。その正誤の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア 法然は、身分や能力に応じた念仏の唱え方を考案し、それぞれの唱え方に応じて異なる浄土に往生すると説いた。

 

イ 道元は、悟りを得るためには、坐禅の修行とともに師から与えられた公案について議論することが必要であると説いた。

 

ウ 栄西は、悟りを得るためには、坐禅の修行と戒律の遵守が必要であるとし、禅の教えが国家の安寧にも役立つと説いた。

 

① ア 正  イ 正  ウ 正

 

② ア 正  イ 正  ウ 誤

 

③ ア 正  イ 誤  ウ 正

 

④ ア 正  イ 誤  ウ 誤

 

⑤ ア 誤  イ 正  ウ 正

 

⑥ ア 誤  イ 正  ウ 誤

 

⑦ ア 誤  イ 誤  ウ 正

 

⑧ ア 誤  イ 誤  ウ 誤


 

問4 下線部 d に関連して、朱子学に関わりのある江戸時代の思想家の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 藤原捏窯は、朝鮮の朱子学から影響を受け、現実の秩序を軽視する仏教に疑問をもち、時期・場所・身分に応じた道徳的実践を説いた。

 

② 山崎闇斎は、自己を修める方法として朱子学で説かれる敬を重視し、君臣関係の絶対性を強調した。

 

③ 貝原益軒は、朝鮮の言語や文化の研究を行い、日本と朝鮮の文化交流に尽力して、国家を超えた普遍的な原理の必要性を述べた。

 

④ 佐久間象山は、アヘン戦争を契機に、それまで信奉していた朱子学を批判し、西洋の道徳と技術を取り入れることの重要性を主張した。


 

問5 下線部 e に関して、次の文章は、荻生祖練が朱子学の経書解釈について言及した一節である。ここに説かれた内容の説明として最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

 

経学のための害は、古言を失ひ候故(そうろうゆえ)、経書の文面(たが)ひ申し候。理気天理人欲等の付添(つきそえ)これ有り候故、聖人の道に一層の皮膜を隔て候。惣体(そうたい)*宋儒**の学は、古聖人の書を文面のままに解したる物にてはこれ無く候。程子(ていし)朱子(いずれ)れも聡明特達の人にて、古聖人の書をはなれて別に自分の見識これ有り、その見識にて経書を(さば)き申されたる物に候……(朱子学の経書解釈に凝り固まった)人は、是非邪正の差別つよく成り行き物(ごと)にすみよりすみまで、はきと***致したる事を好み、……風雅文オののびやかなる事は嫌ひに成り行き人柄(あ)しく成り申し候こと、世上ともに多く御座候。

(『祖棟先生答問書』より)

*惣体:総じて
**宋儒:宋代の儒学者。程子(程顧(ていこう)程願(ていい))や朱子などが含まれる。
***はきと:はっきりと

 

① 朱子学では、古代の語義を尊重しつつ、 意味の通じない部分を恣意的に解釈するため、経書の真意を見失う。こうした経書解釈は人格の涵養(かんよう)にも影響し、朱子学を学ぶと独善的な性格になる。

 

② 朱子学では、古代の語義よりも、自分の考えを重んじて解釈するため、経書の真意を見失う。こうした経書解釈は人格の涵養にも影響し、朱子学を学ぶと細かな道理にこだわり、偏狭な人間になる。

 

③ 朱子学では、経書の真意と自分の考えとを比較しながら妥当な解釈を選択する。こうした態度を突きつめていくと、ささいな語義にこだわり、物事を画一的に捉える性向を助長することになる。

 

④ 朱子学では、自分の考えを付け加えて経書の真意を捉えようとする。こうした態度を突きつめていくと、是非善悪の区別を無視し、自分勝手に振る舞う性向を助長することになる。


 

 

問6 下線部 f に関連して、古典を基に日本固有の精神を探究した国学者の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 契沖は、古典を原典に即して読解しようとする実証的な方法により、古代日本の精神を伝える古典として『万葉集』を研究し、その注釈書である『万葉代匠記』を著した。

 

② 荷田春満は、儒学·仏教・神道を通して己の理想的な心のあり方を究明する心学の方法を基にして、古代日本の心を伝える古典として『日本書紀』を実証的に研究した。

 

③ 本居宣長は、『源氏物語』の研究を通して、事物にふれて生じるありのままの感情を抑制する日本古来の精神を見いだし、儒学や仏教などの外来思想によって、その精神が失われたと考えた。

 

④ 平田篤胤は、『古事記』の研究を通して、身分の相違や差別のない日本古来の理想世界を見いだし、儒学や仏教などの外来思想によって理想世界が差別と搾取の世界へ転じたと批判した。


 

問7 下線部 g に関して、次の文章は、近代に入り、西洋の思想や文化に接した思想家についての記述である。

に入れる語句の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

明治維新以後多くの人々が、欧米諸国へ留学し、様々な思想や文化を日本ヘ紹介した。イギリスに留学した中村正直は、

と題する翻訳書を著し、個人の自由について「他人ニ損害ノ及バヌダケハ、(おの)ガ意ノママナルベク」などと訳して紹介した。フランスに留学した中江兆民は、帰国後に自由民権論を展開し、民権には人民が自ら勝ち取ったものと、為政者が人々に恵み与えるものがあり、このうち、日本の現状では、まず

民権を守り育てていくべきであると説いた。欧米の思想や文化の本格的な流入に伴い、日本の伝統や価値観を再評価し、尊重する動きも生まれた。政府の進める欧化政策に反対した

は、対外的には各国の国民に固有なあり方を対内的には国民の統一を意味する国民主義を主張した。

 

a 『私の個人主義』 b 恩賜的 c 陸翔南
a 『私の個人主義』 b 恩賜的 c 徳富蘇峰
a 『私の個人主義』 b 恢復(回復)的 c 陸翔南
a 『私の個人主義』 b 恢復(回復)的 c 徳富蘇峰
a 『自由之理』 b 恩賜的 c 陸翔南
a 『自由之理』 b 恩賜的 c 徳富蘇峰
a 『自由之理』 b 恢復(回復)的 c 陸翔南
a 『自由之理』 b 恢復(回復)的 c 徳富蘇峰


 

問8 下線部 h に関連して、日常の生活に注目して思索を展開した思想家の人として、柳宗悦がいる。彼についての説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 名もなき人々の生活に注目することによって確立された民俗学の方法を基に日本の神の原型を探究し、神は海の彼方にある常世国に住み、時を定めて村落を訪れる「まれびと」であると主張した。

 

② 民衆が伝承してきた昔話や習俗のなかに、固有の文化があると考え、文字として残っていない琉球・沖縄の伝承や古歌謡「おもろ」に注目し、沖縄固有の民俗学の確立に尽力した。

 

③ 江戸の庶民のなかで、恋を貫こうとする意気込みやきっぱりと諦める気風が「いき」であるとして尊重されていたことを見いだし、それが日本的な美意識の根幹を成すと主張した。

 

④ 名もなき職人の熟練した手仕事によって作られた日用品のなかに 固有の実用的な美しさがあると考え、それを「民芸」と名付けて、各地の民芸品の収集や再発見を目的とした民芸運動を展開した。


 

問9 本文の趣旨に合致する記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 日本の先人たちは、外来の思想や文化にみられる思索を基にしつつ、それらの再解釈や批判的考察を行ってきた。こうした営みを通して、他国とも共有し得るような学問的成果が生み出されてきた。

 

② 日本の先人たちは、外来の思想や文化の普遍的な思考様式を肯定的に受けとめ、模倣することに専心してきた。こうした営みによって、他国の思想や文化を受容することを重んじる学問的な態度が生み出されてきた。

 

③ 日本の先人たちは、外来の思想や文化を一方的に受容するだけでなく、それらを自国の価値観に基づいて批判的に検討してきた。こうした思索を通して、先人たちは日本固有の思想や文化を見いだしてきた。

 

④ 日本の先人たちは、外来の思想や文化を一方的に受容するだけでなく、それらを再解釈してきた。こうした思索によって、先人たちは自国と他国の思想や文化を比較し、外来思想の有する普遍性を称賛してきた。


 

 

第 4 問 
次の文章を読み、下の問い(問1 ~ 9)に答えよ。(配点 24)

 

学問のあり方として、文系と理系はおのおの独立したものだと考えてはいないだろうか。だが、古代ギリシア ・ ローマにおいて、生き方の探究者と自然の探究者はともに哲学者と呼ばれた。近代以降も西洋では、自然の研究との密接な関係のなかで人間の精神や社会が考察されてきたのである。その流れを追ってみよう。人文主義者や a モラリスト の活躍にみられるように近代思想の中心的な課題の一つに人間性の探究がある。この探究は、古典の研究に促される一方、新たに興隆した b 合理的な自然の研究 から生じた課題も抱えていた。例えば機械論的自然観においては、人間も無限の宇宙の一点にすぎず、因果法則が支配する世界では c 自由 も存在し得なくなるようにみえる。しかし、優れた自然科学者でもあったパスカルは、自然のなかでは(あし)のように弱い人間にも、思考によって宇宙を包む偉大さがあると説いた。また、 d カント は自然とは区別された道徳の領域において、自然界の必然性に(とら)われない自由の可能性を追求した。自然の秩序のなかで精神を独自に働かせる人間像が打ち出される一方、自然界と同様の法則性を人間の社会や歴史にも発見しようとする思想もある。エンゲルスはマルクスとともに、歴史にも法則的説明を与え、富の e 不平等を告発する社会主義思想を「空想から科学へ」と進展させることを試みた。また、コントは神学や形而上学に訴えずに社会を含む全事象に法則を見いだす実証的段階に至ることが人類の f 進歩 だとした。自然の変化も人間の歴史も一様に法則的に捉えるような見方に対して、自然と人間のより直接的な関わりに目を向けようとする動きもある。ベルクソンは法則主義的・機械論的な見方とは異なる、 g 有機体や進化に注目する自然観 に基づいて、より直観的な仕方で、人間の生命のあり方を把握しようとした。また、 h 現象学 においては、世界をもっばら自然科学的に捉えようとする姿勢を見直し、日常的な生活経験における自然とのより具体的な接触に立ち返ることが目指された。このように人間の精神や社会をめぐる知の探究は、自然をめぐる探究にそのつど応答しながら進展してきた。私たちも、文系・理系の区別に囚われず、幅広い視野に立って、自然と関わりつつ生きる人間を探究していく必要があろう。

 

問1 下線部 a に関して、モラリストを代表する人物にモンテーニュがいる。彼の思想の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 人間は、「私は何を知っているか」と問い、謙虚に自己吟味を行うことによって、自らに潜んでいる偏見や独断から脱することができる。

 

② 人間は、単に行為するだけにとどまらず、行為の正不正に関する道徳的判断をも下す存在だが、この判断は知性ではなく感情の働きである。

 

③ 人間は、生の悲惨さを自ら癒すことができないために、娯楽や競争などの気晴らしに逃避して、気を紛らわそうとする。

 

④ 人間は、自由意志に従うと「堕落した下等な被造物」にもなり得るため、自由意志の上位に信仰をおくことによって正しき者になる。


 

問2 下線部 b に関連して、近代自然科学の成立に寄与した思想家としてデカルトがいる。彼についての説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 知識の正しい獲得法として、実験や観察に基づいた個々の経験的事実から一般的な法則を導く帰納法を提唱した。

 

② 自然界に存在する生物の種は不変ではなく、より環境に適した種が自然選択(自然淘汰)によって残ってきたのだとした。

 

③ 人間の心とは、最初は何も書き込まれていない白紙のようなものであるとして、生得観念の存在を否定した。

 

④ 精神が対象を疑いの余地なく認識し、他の対象からもはっきりと区別していることを、明証的な真理の基準だとした。


 

問3 下線部 c に関して、次のア~ウは、自由についての思想家たちの考えを説明した記述である。その正誤の組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア サルトルによれば、人間は、選択と行為によって自らを作り上げる自由な存在であり、各自の利益と幸福を追求する市民社会を実現すべきである。

 

イ ルソーによれば、人間は、生まれつき自由で平等だが、自然的自由を放棄して自らが制定した法に従うことで、市民的(社会的)自由を獲得する。

 

ウ ホッブズによれば、人間は、自然状態において、自らの生命を維持するためにどんなことでも行う自由を、おのおの自然権としてもっている。

 

① ア 正  イ 正  ウ 正

 

② ア 正  イ 正  ウ 誤

 

③ ア 正  イ 誤  ウ 正

 

④ ア 正  イ 誤  ウ 誤

 

⑤ ア 誤  イ 正  ウ 正

 

⑥ ア 誤  イ 正  ウ 誤

 

⑦ ア 誤  イ 誤  ウ 正

 

⑧ ア 誤  イ 誤  ウ 誤


 

問4 下線部 d に関して、次のカントの文章を読み、その内容の説明として最も適当なものを下の①~④のうちから一つ選べ。

 

人は道徳法則に反した振る舞いを思い出すときそれを故意でない過失として、どうしても避けられない単なる不注意として、したがって、自らが自然必然性の流れに押し流された出来事であるかのようにとりつくろい、自分はそれについて責めがないと宣言するために、好きなだけ技巧を凝らすこともできよう。その人は、しかし、自分が不正を犯したときにそれでも自分で判断してやったこと、つまり自らの自由を行使していたことを意識している限り、自らに有利なように語る弁護人としての自分も、自らのうちに住まう原告としての自分を決して沈黙させられないことに気づく。……悪事を自然の結果とみなしたからといって、それによってその人が自分自身に加える自責や非難から守られるというわけではない。ずっと以前に犯した行いについて、それを思い出すたびに後悔することも、以上のことに基づいている。

(『実践理性批判』より)

 

① 人は自らの不正な行いを自然界の必然性に従って生じた、自分では回避できない出来事として解釈できる。その場合、人は自分に有利に語り、自分には責めがないことを自らにも他人にも表明する自由がある。

 

② 人は自らの不正な行いについて、自責や後悔の念に駆られることがある。その場合、人はその行いが過失や不注意によるものではなく、自分の判断によってなされた自由な行為であったことを意識している。

 

③ 人は自らの不正な行いを自然界の必然性に従って生じた、自分では回避できない出来事として解釈できる。ただし、その行いが遠い過去のことになると、それを思い出すたびに後悔するようになり、道徳的意識が高まる。

 

④ 人は自らの不正な行いについて、自責や後悔の念に駆られることがある。ただし、人の行いは過失や不注意の結果にすぎない場合もあり、その行いに対する非難から自分を守るために人は道徳法則に訴える。


 

問5 下線部 e に関連して、富の格差をはじめとする様々な不平等を思想家たちは 問題にしてきた。 次の ア ~ ウ は、そうした思想家たちの説明であるが、それぞれ誰のことか。 その組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア 敬虔(けいけん)なキリスト教徒にして人文主義者(ヒューマニスト)である立場から、金銭や富が人間よりも大切にされる社会を批判し、貨幣や私有財産のない理想社会を描く作品を発表した。

 

イ 男性優位の文化・習慣が女性に特定の生き方を強いていることを明らかにし、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と主張して、以後のフェミニズム運動に影響を与えた。

 

ウ 自由競争によって生じる所得や地位の不平等は、社会の最も不遇な人々の境遇の改善につながる限りで認められるとする格差原理を主張して、公正としての正義を構想した。

 

トマス ・ モア ボーヴォワール ロールズ
トマス ・ モア ボーヴォワール サンデル
トマス ・ モア シモーヌ ・ ヴェイユ ロールズ
トマス ・ モア シモーヌ ・ ヴェイユ サンデル
サン=シモン ボーヴォワール ロールズ
サン=シモン ボーヴォワール サンデル
サン=シモン シモーヌ ・ ヴェイユ ロールズ
サン=シモン シモーヌ ・ ヴェイユ サンデル


 

問6 下線部 f に関連して、科学の進歩についての従来の考え方を批判し、新たな考え方を提唱した思想家にクーンがいる。彼の思想の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 科学は、仮説が従来の実験によって確かめられない場合でも、新たに実験をやり直すことで危機を乗り越える。科学者たちの地道な作業の蓄積によってパラダイムの転換が生じ、科学革命が起きる。

 

② 科学は、世界を一般的なパラダイムで解釈する限り、多様な価値観が共存する現代では危機に陥る。そのため、科学が進歩するには、具体的状況で思考する「小さな物語」を中心にすえなくてはならない。

 

③ 科学は個々の事実を一定のパラダイムのなかで解釈する。既存の理論では理解できない事実が積み重なり、それらの新たな事実を説明しようとするときパラダイムの転換が生じて、科学革命が起きる。

 

④ 科学は、命題一つ一つの真偽を確かめることはできない。そのため、科学が進歩するには、理論的枠組みとしてのパラダイム全体を単位として真偽を問う「ホー リズム」の見方に移行する必要がある。


 

問7 下線部 g に関連して、有機体や進化という考え方に注目して人間を考察した思想家にデューイがいる。次の文章は、彼の思想についての説明である。

に入れる語句の組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

デューイは、人間も他の生物と同じように、有機体として環境に適応することで生き成長すると考えた。彼の提唱する

によれば、人間に特有な知性もまた、抽象的な真理を発見するためにではなく、日常生活上の苦境や問 題への対処を実り豊かにし、その解決に役立つためにある。彼は、環境との相互作用を通じて個々の問題解決を図り、未来を展望する能力を

と呼び、この能力を発揮することで、人は過去の習慣を修正し、自我を未来に向けて形成できるとした。さらに、デューイは、こうした人間観に基づいて、従来の暗記中心教育に対して、問題解決型教育を新たなモデルとした教育改革思想も打ち出している。著書

で主張されるように、彼は学校での学習も、学校のそとで起こっている社会の問題の解決に関わるべきだと考えた。

 

a 道具的理性 b 創造的知性 c 『幼児期と社会』
a 道具的理性 b 創造的知性 c 『民主主義と教育』
a 道具的理性 b 投 企 c 『幼児期と社会』
a 道具的理性 b 投 企 c 『民主主義と教育』
a 道具主義 b 創造的知性 c 『幼児期と社会』
a 道具主義 b 創造的知性 c 『民主主義と教育』
a 道具主義 b 投 企 c 『幼児期と社会』
a 道具主義 b 投 企 c 『民主主義と教育』


 

問8 下線部 h に関して、代表的な現象学者の考えの説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① メルロ=ポンティによれば人間は気がつけば既にこの世界に投げ出されている。現象学は、この根本事実に基づいて、誕生とともに死へと向かう存在としての人間を分析する学問的営為である。

 

② フッサールによれば実在すると私たちが素朴にみなしているものは、私たちの意識との関わりにおいて存在している。現象学は、意識にあらわれる現象をありのままに記述する学問的営為である。

 

③ メルロ=ポンティによれば、世界には何らの意味も目的もなく、一切は偶然的に存在している。現象学は、そうした不条理な世界のなかにあっても人生の価値を問いながら真摯に生きることを目指す立場である。

 

④ フッサールによれば、自然的態度において人は世界の存在を信じている。現象学は、そうした自明な判断を括弧に入れることによって、あらゆる物事の妥当性を懐疑して、学問の絶対的確実性を否定する立場である。


 

問9 本文の趣旨に合致する記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 近代以降の西洋の思想家たちは、自然と精神の探究を調和させたり、自然の探究で得られた知見や方法を社会の事柄にも適用したりしてきた。 こうした歴史に倣い、最も確実な自然科学を模範として、精神や社会に関する学問を再編することで、文系・理系の乖離を是正することが必要である。

 

② 近代以降の西洋の思想家たちは、自然と精神の探究を調和させたり、自然の探究で得られた知見や方法を社会の事柄にも適用したりしてきた。 しかし、自然と精神や社会とでは領域が異なるのであり、人間に対する考察の独自性を際立たせて、文系・理系の区分を設定し直すことが肝心である。

 

③ 近代以降の西洋の思想家たちは、自然に対する探究を活用したり、さらに深めたりすることで、人間の精神や社会についての考察を進めてきた。 こうした歴史に倣い、文系・理系の区別を自明視せずに、自然と切り離せない存在としての人間を探究する学問のあり方を求めることが重要である。

 

④ 近代以降の西洋の思想家たちは、自然に対する探究を活用したり、さらに深めたりすることで、人間の精神や社会についての考察を進めてきた。 自然科学の展開が人間に多大な影響を与え始めた現在だからこそ、文系・理系の枠を超えて、時代に左右されない人間の本質論が求められている。


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