2017年大学入試センター試験問題



倫理 解答 第4問 問6~9正解

第 4 問 
次の文章を読み、下の問い(問1 ~ 9)に答えよ。(配点 24)

 

学問のあり方として、文系と理系はおのおの独立したものだと考えてはいないだろうか。だが、古代ギリシア ・ ローマにおいて、生き方の探究者と自然の探究者はともに哲学者と呼ばれた。近代以降も西洋では、自然の研究との密接な関係のなかで人間の精神や社会が考察されてきたのである。その流れを追ってみよう。人文主義者や a モラリスト の活躍にみられるように近代思想の中心的な課題の一つに人間性の探究がある。この探究は、古典の研究に促される一方、新たに興隆した b 合理的な自然の研究 から生じた課題も抱えていた。例えば機械論的自然観においては、人間も無限の宇宙の一点にすぎず、因果法則が支配する世界では c 自由 も存在し得なくなるようにみえる。しかし、優れた自然科学者でもあったパスカルは、自然のなかでは(あし)のように弱い人間にも、思考によって宇宙を包む偉大さがあると説いた。また、 d カント は自然とは区別された道徳の領域において、自然界の必然性に(とら)われない自由の可能性を追求した。自然の秩序のなかで精神を独自に働かせる人間像が打ち出される一方、自然界と同様の法則性を人間の社会や歴史にも発見しようとする思想もある。エンゲルスはマルクスとともに、歴史にも法則的説明を与え、富の e 不平等を告発する社会主義思想を「空想から科学へ」と進展させることを試みた。また、コントは神学や形而上学に訴えずに社会を含む全事象に法則を見いだす実証的段階に至ることが人類の f 進歩 だとした。自然の変化も人間の歴史も一様に法則的に捉えるような見方に対して、自然と人間のより直接的な関わりに目を向けようとする動きもある。ベルクソンは法則主義的・機械論的な見方とは異なる、 g 有機体や進化に注目する自然観 に基づいて、より直観的な仕方で、人間の生命のあり方を把握しようとした。また、 h 現象学 においては、世界をもっばら自然科学的に捉えようとする姿勢を見直し、日常的な生活経験における自然とのより具体的な接触に立ち返ることが目指された。このように人間の精神や社会をめぐる知の探究は、自然をめぐる探究にそのつど応答しながら進展してきた。私たちも、文系・理系の区別に囚われず、幅広い視野に立って、自然と関わりつつ生きる人間を探究していく必要があろう。

 

問6 下線部 f に関連して、科学の進歩についての従来の考え方を批判し、新たな考え方を提唱した思想家にクーンがいる。彼の思想の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 科学は、仮説が従来の実験によって確かめられない場合でも、新たに実験をやり直すことで危機を乗り越える。科学者たちの地道な作業の蓄積によってパラダイムの転換が生じ、科学革命が起きる。

 

② 科学は、世界を一般的なパラダイムで解釈する限り、多様な価値観が共存する現代では危機に陥る。そのため、科学が進歩するには、具体的状況で思考する「小さな物語」を中心にすえなくてはならない。

 

③ 科学は個々の事実を一定のパラダイムのなかで解釈する。既存の理論では理解できない事実が積み重なり、それらの新たな事実を説明しようとするときパラダイムの転換が生じて、科学革命が起きる。

 

④ 科学は、命題一つ一つの真偽を確かめることはできない。そのため、科学が進歩するには、理論的枠組みとしてのパラダイム全体を単位として真偽を問う「ホー リズム」の見方に移行する必要がある。

 

問7 下線部 g に関連して、有機体や進化という考え方に注目して人間を考察した思想家にデューイがいる。次の文章は、彼の思想についての説明である。

に入れる語句の組合せとして正しいものを、下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

デューイは、人間も他の生物と同じように、有機体として環境に適応することで生き成長すると考えた。彼の提唱する

によれば、人間に特有な知性もまた、抽象的な真理を発見するためにではなく、日常生活上の苦境や問 題への対処を実り豊かにし、その解決に役立つためにある。彼は、環境との相互作用を通じて個々の問題解決を図り、未来を展望する能力を

と呼び、この能力を発揮することで、人は過去の習慣を修正し、自我を未来に向けて形成できるとした。さらに、デューイは、こうした人間観に基づいて、従来の暗記中心教育に対して、問題解決型教育を新たなモデルとした教育改革思想も打ち出している。著書

で主張されるように、彼は学校での学習も、学校のそとで起こっている社会の問題の解決に関わるべきだと考えた。

 

a 道具的理性 b 創造的知性 c 『幼児期と社会』
a 道具的理性 b 創造的知性 c 『民主主義と教育』
a 道具的理性 b 投 企 c 『幼児期と社会』
a 道具的理性 b 投 企 c 『民主主義と教育』
a 道具主義 b 創造的知性 c 『幼児期と社会』
a 道具主義 b 創造的知性 c 『民主主義と教育』
a 道具主義 b 投 企 c 『幼児期と社会』
a 道具主義 b 投 企 c 『民主主義と教育』

 

問8 下線部 h に関して、代表的な現象学者の考えの説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① メルロ=ポンティによれば人間は気がつけば既にこの世界に投げ出されている。現象学は、この根本事実に基づいて、誕生とともに死へと向かう存在としての人間を分析する学問的営為である。

 

② フッサールによれば実在すると私たちが素朴にみなしているものは、私たちの意識との関わりにおいて存在している。現象学は、意識にあらわれる現象をありのままに記述する学問的営為である。

 

③ メルロ=ポンティによれば、世界には何らの意味も目的もなく、一切は偶然的に存在している。現象学は、そうした不条理な世界のなかにあっても人生の価値を問いながら真摯に生きることを目指す立場である。

 

④ フッサールによれば、自然的態度において人は世界の存在を信じている。現象学は、そうした自明な判断を括弧に入れることによって、あらゆる物事の妥当性を懐疑して、学問の絶対的確実性を否定する立場である。

 

問9 本文の趣旨に合致する記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 近代以降の西洋の思想家たちは、自然と精神の探究を調和させたり、自然の探究で得られた知見や方法を社会の事柄にも適用したりしてきた。 こうした歴史に倣い、最も確実な自然科学を模範として、精神や社会に関する学問を再編することで、文系・理系の乖離を是正することが必要である。

 

② 近代以降の西洋の思想家たちは、自然と精神の探究を調和させたり、自然の探究で得られた知見や方法を社会の事柄にも適用したりしてきた。 しかし、自然と精神や社会とでは領域が異なるのであり、人間に対する考察の独自性を際立たせて、文系・理系の区分を設定し直すことが肝心である。

 

③ 近代以降の西洋の思想家たちは、自然に対する探究を活用したり、さらに深めたりすることで、人間の精神や社会についての考察を進めてきた。 こうした歴史に倣い、文系・理系の区別を自明視せずに、自然と切り離せない存在としての人間を探究する学問のあり方を求めることが重要である。

 

④ 近代以降の西洋の思想家たちは、自然に対する探究を活用したり、さらに深めたりすることで、人間の精神や社会についての考察を進めてきた。 自然科学の展開が人間に多大な影響を与え始めた現在だからこそ、文系・理系の枠を超えて、時代に左右されない人間の本質論が求められている。

 

設 問 正 解 配 点
問6 3 3
問7 6 3
問8 2 3
問9 3 2
   

 

 

 

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