倫理 解答 第2問 問6~9正解

第 2 問
次の文章を読み、下の問い(問1 ~ 9)に答えよ。(配点 24)

 

私たちの生きる現実の社会は、貧困や差別など、様々な問題を抱えている。私たちはそのなかでどのような生を模索すればよいだろうか。先哲の思想を通じて考えてみよう。先哲の思想のなかには現実に存在する社会階層や a 貧富 の差を越えて、人間の救済を説く思想があった。イエスは、軽蔑されていた徴税人や罪人を分け隔てせず、 b 神 からの救いの可能性は万人に等しく与えられていると唱えた。イエスの思想は、弟子たちの活動を通じて、社会階層や民族の違いを越えて広く受け入れられていった。また、 c ムハンマドが授かったクルアーン(コーラン)の教え は、血縁を重視する部族社会の枠組みを越えたものであり、唯一神に帰依した人々は、家柄や貧富にかかわらず、神の前では誰もが平等だとするものであった。さらに、 d インド においては、ブッダが生まれに基づく身分制を批判し、出自よりも、何を行っているかが重要だと説いた。仏教では、悟りを得る可能性を出身階層で限定しようとしなかった。これらの思想は、貧困や差別の残る社会にありながらも、それを超えた視点で人々を平等に扱い、よりよい生や社会を模索するものであった。一方、人間が社会のなかで果たすべき役割について考察する思想もあった。プラトンは、ソクラテスが死刑に処せられたことに代表される現実政治の問題点を指摘し、正義を具現する e 国家を構想した。そして、その実現のためには、 f 哲学者 が統治者となり、国を防衛する者と生産に従事する者とともにそれぞれが当人に適した仕事を果たすことが必要だと主張したのである。また、孟子は、心を尽くして政治を行う君主と力を尽くして働く民との役割分担を説き、 g 仁 と義に基づく王道政治を理想として、民を虐げる政治を批判した。さらに、君主は h 家族 のいない老人など弱い立場の人々にも配慮すべきだと説いた。これらの思想は、理想に基づいて現実の政治のあり方を批判し、より調和のとれた社会を目指している。現実を超えた次元の救いに自身の生きる意味を見いだすにせよ、社会全体の理想的な調和の実現を目指していくにせよ、先哲は現実を広く見渡す立場から、よりよい生のあり方を提示した。先哲の思想が今なお示唆的なのはいずれも現実世界に対する深い反省を踏まえ、社会が抱える様々な問題に触れているからであろう。

 

問6 下線部 f に関連して、古代ギリシア・ローマにおける哲学者についての記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ヘラクレイトスは、万物の根源を火であるとしたうえで、「万物は流転する」と唱え、その絶えず変化する様子に法則性は認められず、調和した秩序は見せかけのものにすぎないと主張した。

 

② パルメニデスは、論理的思考に基づいて、在るものは常に在ると説き、世界における変化や生成は見かけだけの現象にすぎず、存在するものはただ一つであって、生成も消滅もしないと主張した。

 

③ プラトンは、この世に生まれた人間の魂を、感覚の世界に囚われ、イデアを忘却してしまったものと考え、イデアの世界はいかなる手段によっても知ることができないとする二世界説を唱えた。

 

④ マルクス・アウレリウスは、ローマ皇帝であると同時に、自らも哲学を修め、この世の現象は原子の不規則な動きによって構成されているという原子論の考えを発展させた。

 

問7 下線部 g に関連して、次の文章は、16 世紀末から 17 世紀初頭にかけて中国で布教した宣教師マテオ・リッチが、万物一体の仁を説く同時代の儒者の考えに対して応答した一節である。そこで論じられている内容の説明として最も適当なものを下の①~④のうちから一つ選べ。

 

君子は物に対しては これを愛しますが仁しみません*。今、(民や親族を含めて)他人一般に対して一体であるとするならば必ず等しくこれを(いつく)しむべきであるということになります。墨子が他人を兼ね愛したことに対して、昔の儒者はこれを非として論弁しました。今、土や泥をも仁しむことを勧めて、今の儒者が是としてこれに従うのは、何ということでしょうか。天主が天地万物を造られましたが、その万物のあり方は様々であって、根源は同じで種類が異なっていたり、種類は同じで性質が異なっていたり、性質は同じで作用が異なっていたりします。今、これをむりやり一体にしようとするならば造物者の意志に逆らうことになります。

(『天主実義』より)

*君子は……仁しみません:物、民、親族に対して、それぞれ異なる親密さで接するべきだと説く孟子の言葉を踏まえている。

 

① 兼愛を説く墨家の思想は正しく、根源を等しくする万物を平等に扱う天主の教えと合致している。

 

② 人と物とで対応を変える昔の儒者の考えは間違っており、万物の一体を説く今の儒者の考えに及ばない。

 

③ 万物に対して等しく仁で接するべきだとする今の儒者の考えは正しく、万物が一体であると唱える天主の教えと合致している。

 

④ 万物の一体を説く今の儒者の考えは間違っており、墨家の兼愛説を批判していた昔の儒者の立場を離れるものである。

 

問8 下線部 h に関して、儒家の家族観についての記述として適当でないものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 孔子は、祖先に対する祭祀儀礼を批判し、生存している自分の父母や家族を最優先に考えるべきだと説いた。

 

② 『論語』では、父母に対する孝や兄に対する悌といった徳目が軍視され、それらが仁の根幹であると説かれている。

 

③ 孟子は、基本的な人間関係を五倫としてまとめ、「父子」の間には「(しん)」という関係が成立すると説いた。

 

④ 朱子学では個人の修養や国家の安定などとともに家族・親族の人間関係をうまく取り仕切る「斉家」の実践が要請された。

 

問9 本文の趣旨に合致する記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 先哲の思想のなかには、差別の残る現実社会の次元を超えた平等を説く思想もあれば理想に基づいて社会的な調和を説く思想もあった。 いずれの思想においてもその目標がこの世では実現できるはずもないことが当初から理解されており、現実を超えた世界でのみ可能になると説かれていた。

 

② 先哲の思想のなかには、万人の平等を提唱し、現実社会の貧困や差別を根本的になくさない限り、救済は成立しないとする思想がある一方、社会を構成する者たちの役割分担を強調して、現実の政治の歪みを正そうとした思想もあった。 いずれの思想においても現実に対する批判が根底にある。

 

③ 先哲の思想のなかには、救済は現実を超えた世界において人々に平等に与えられると考えた思想がある一方、現実において理想を追求し、調和のとれた社会を構想する思想もあったいずれの思想においても神や統治者に、批判を差し挟むことなく従うことが必要とされた。

 

④ 先哲の思想のなかには差別の残る現実社会の次元を超えた平等を説き、よりよい生のあり方を提示する思想もあれば社会を構成する者たちの役割分担を考え、調和のとれた理想的な社会を模索する思想もあった。いずれの思想においても現実社会の諸問題を見すえた思索が展開されている。

 

設 問 正 解 配 点
問6 2 3
問7 4 3
問8 1 2
問9 4 2

 

 

 

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