2017年大学入試センター試験問題



倫理 解答 第2問 問1~5正解

第 2 問
次の文章を読み、下の問い(問1 ~ 9)に答えよ。(配点 24)

 

私たちの生きる現実の社会は、貧困や差別など、様々な問題を抱えている。私たちはそのなかでどのような生を模索すればよいだろうか。先哲の思想を通じて考えてみよう。先哲の思想のなかには現実に存在する社会階層や a 貧富 の差を越えて、人間の救済を説く思想があった。イエスは、軽蔑されていた徴税人や罪人を分け隔てせず、 b 神 からの救いの可能性は万人に等しく与えられていると唱えた。イエスの思想は、弟子たちの活動を通じて、社会階層や民族の違いを越えて広く受け入れられていった。また、 c ムハンマドが授かったクルアーン(コーラン)の教え は、血縁を重視する部族社会の枠組みを越えたものであり、唯一神に帰依した人々は、家柄や貧富にかかわらず、神の前では誰もが平等だとするものであった。さらに、 d インド においては、ブッダが生まれに基づく身分制を批判し、出自よりも、何を行っているかが重要だと説いた。仏教では、悟りを得る可能性を出身階層で限定しようとしなかった。これらの思想は、貧困や差別の残る社会にありながらも、それを超えた視点で人々を平等に扱い、よりよい生や社会を模索するものであった。一方、人間が社会のなかで果たすべき役割について考察する思想もあった。プラトンは、ソクラテスが死刑に処せられたことに代表される現実政治の問題点を指摘し、正義を具現する e 国家を構想した。そして、その実現のためには、 f 哲学者 が統治者となり、国を防衛する者と生産に従事する者とともにそれぞれが当人に適した仕事を果たすことが必要だと主張したのである。また、孟子は、心を尽くして政治を行う君主と力を尽くして働く民との役割分担を説き、 g 仁 と義に基づく王道政治を理想として、民を虐げる政治を批判した。さらに、君主は h 家族 のいない老人など弱い立場の人々にも配慮すべきだと説いた。これらの思想は、理想に基づいて現実の政治のあり方を批判し、より調和のとれた社会を目指している。現実を超えた次元の救いに自身の生きる意味を見いだすにせよ、社会全体の理想的な調和の実現を目指していくにせよ、先哲は現実を広く見渡す立場から、よりよい生のあり方を提示した。先哲の思想が今なお示唆的なのはいずれも現実世界に対する深い反省を踏まえ、社会が抱える様々な問題に触れているからであろう。

 

問1 下線部 a に関連して、金品の所有や利得の追求についての教えや思想の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ソクラテスは、魂を優れたものにするよう配慮しさえすれば、金銭をできるだけ多く自分のものにしようとする欲求は自然と満たされる、という福徳一致の考えを示した。

 

② イスラム教では、あらゆるものは究極的には神の所有物とされるが、人にはそれを用いる権利が与えられており、貸した金から利子を得ることも広く認められていた。

 

③ ユダヤ教では、神からモーセに授けられた十戒を遵守することが求められその十戒のなかには、盗みを禁じる規定や、隣人の家を欲することを禁じる規定があった。

 

④ 仏教では、所有欲が執着として否定され欲しいものが得られないという苦悩は、所有欲があるから生じるのであり、執着を絶つためには徹底した苦行が必要であるとされた。

 

問2 下線部 b に関連して、神と教会についてのアウグスティヌスの考えとして最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 教会が指導する聖書研究を通して信仰を深めることにより、神の恩寵を得ることができると考えた。

 

② 人は神の恩寵によらなければ救われないと主張し、教会は神の国と地上の国を仲介するものだと考えた。

 

③ 教会への寄進といった善行を積むことにより、神の恩寵を得ることができると考えた。

 

④ 人は神の恩寵によらなければ救われないと主張し、贖宥状の購入による救済を説いた教会の姿勢は間違っていると考えた。

 

問3 下線部 c に関して、次の ア ~ ウ は、イスラーム教についての記述である。 その正誤の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア イスラーム教世界の最高指導者であるカリフは、神から啓示を授かる預言者であると同時に、ムハンマドの後継者とみなされた。

 

イ 預言者ムハンマドによって率いられたウンマは、宗教的ウンマと政治的ウンマに分かれていた。

 

ウ 預言者ムハンマドも人間であるとされ、イエスもまたムハンマドに先行する預言者であって、神の子ではないとされた。

 

① ア 正  イ 正  ウ 正

 

② ア 正  イ 正  ウ 誤

 

③ ア 正  イ 誤  ウ 正

 

④ ア 正  イ 誤  ウ 誤

 

⑤ ア 誤  イ 正  ウ 正

 

⑥ ア 誤  イ 正  ウ 誤

 

⑦ ア 誤  イ 誤  ウ 正

 

⑧ ア 誤  イ 誤  ウ 誤

 

 

問4 下線部 d に関連して、古代インドで展開された思想についての記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ウパニシャッド哲学は、真の自己とされるアートマンは観念的なものにすぎないため、アー トマンを完全に捨てて、絶対的なブラフマンと一体化するべきであると説いた。

 

② バラモン教は、聖典ヴェーダを絶対的なものとして重視していたため、ヴェーダの権威を否定して自由な思考を展開する立場を六師外道と呼んで批判した。

 

③ ウパニシャッド哲学では、人間を含むあらゆる生きものが行った行為、すなわち業(カルマ)の善悪に応じて、死後種々の境遇に生まれ変わると考えられた。

 

④ バラモン教では、唯ーなる神の(まつ)り方が人々の幸福を左右するという考えさいしつかさどに基づいて、祭祀(さいし)(つかさど)るバラモンが政治的指導者として社会階層の最上位に位置づけられた。

 

問5 下線部 e に関連して、次の文章は、ポリス(国家)が全盛期を過ぎた後のギリシア・ローマ世界の思想についての記述である。

に入れる語句の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

アレクサンドロス大王の東征を機に、ギリシア文化が東方の文化と混じり合うようになると、ヘレニズム文化が誕生した。こうした諸文化の混交を経て成立したストア派からは

の思想が提示された。宇宙のロゴス(理性)に従って生きる人は、都市国家の枠組みを越えて、みな同胞であるという主張がなされたのである。この考えは、近代の

思想の成立に影響を与えることになる。ストア派は宇宙の理法を神として捉えたが、一方で、

を代表とする新プラトン主義は、神を超越的なを説いた。それはギリシア思想の有する合理的な精神に、神秘主義的な観点を接合するものであった。

 

a 世界市民主義 b 自然法 c セネカ
a 世界市民主義 b 自然法 c プロティノス
a 世界市民主義 b 実定法 c セネカ
a 世界市民主義 b 実定法 c プロティノス
a 地球全体主義 b 自然法 c セネカ
a 地球全体主義 b 自然法 c プロティノス
a 地球全体主義 b 実定法 c セネカ
a 地球全体主義 b 実定法 c プロティノス

 

設 問 正 解 配 点
問1 3 3
問2 2 2
問3 7 3
問4 3 3
問5 2 3

 

 

 

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