倫理 解答 第1問 問6~10正解
第 1 問
以下は大学生 A と B の会話である。これを読み、下の問い(問1 ~ 10)に答えよ。(配点 28)
A:最近話題の映画を観に行ったけれど、 a 命の尊さ っていうテーマはいいのに、中身はいろんな名作を継ぎ接ぎしただけで、がっかりしたなあ。
B:継ぎ接ぎ自体は悪くないと思うよ。何をどこから選んでくるのか、それをどうアレンジするのか、そのアイディア自体はオリジナルなんだから。
A:それでも、他人のアイディアに頼っていることには変わりないよ。できあいのアイディアに頼らずに、自力で頑張った人間だけが、しっかりした b 自己を確率することができる。そういう人が c 芸術家 になれるんだと思うな。
B:個人の力を過信しているなあ。使えるものは何でも使うべきだよ。例えば、映像でもサウンドでも、テクノロジーの力を借りれば表現の幅も拡がるしね。
A:規格化されたテクノロジーに頼っていたら、型にはまった発想にしかならないよ。その現実から d 逃避 していたら、真の芸術なんて生まれないよ。
B:真の芸術かどうかなんて、どうでもいいよ。いい作品だったら e インターネット なんかでも評判が拡がっていくだろうし、それで十分じゃないのかな。
A:ネットでは独り言をつぶやくか、仲間内で馴れ合っているだけでしょ。自分と考えの違う人たちとも、意見をやりとりすることが大事だと思うな。
B:だからこそネットをもっと使うべきじゃないの?ネット上なら世界中の人と意見を言い合えるんだから、とっても f 民主的で、いいと思うけれどね。
A:いや、ネットで流れている評判は、そう簡単には信じられないなあ。実際個性のない作品であっても、結構たくさんの人たちに受けたりするわけだから。
B:同じ g 世代なのに頭が堅いね。受け手を h 大衆 と見下すべきじゃないよ。作品に意味を与えるのは受け手だし、受け手の役割は思った以上に大きいよ。
A:たいていの人は、 i メディアから情報を受け取って消費している だけだよ。
B:消費しているだけでも目は肥えていくし、優れた作品に刺激されて自分が作り手になることもある。そういう可能性をもっと考えてもいいと思うな。
境遇がすべて不平等であるときには、どんなに大きな不平等も目障りではないが、すべてが斉一ななかでは最小の差異も衝撃的に思える。完璧に斉一になるにつれて、差異をみることは耐え難くなる。平等への愛着が平等そのものとともに増大するのは、だから当然である。…民主的な国民は、こうして最小の特権にも憎悪の念を募らせつづけ、これに反対せずにはいられない。しかし、奇妙なことに、この憎悪の念に後押しされて、あらゆる政治的権利が国家の唯一の代表者の手に次第に集中するようになる。この主権者(権力者)は当然あらゆる市民のうえに立つ存在であり、いかなる市民の嫉妬をかうこともない。同等の者たちから特権を奪って、それをすべてこの主権者に預けるのを、誰もがよしとする。民主的世紀の人間は、自分と同等の隣人に従うことに、極度の嫌悪感を覚えざるを得ない。
(『アメリカのデモクラシー』より)
① 各人のおかれた境遇の平等が進むにつれ、人は他者との小さな差異に拘泥し、自分と異質な人を憎悪して視野から排除するようになるが、自分自身が権力者に支配されること自体は、ことさら疑問に思わないようになる。
② 民主化が進展して各人の境遇が平等になると、かえって人は他者との差異が気になり、自分以外の人が自分と同等であることを憎悪するようになるので、権力者がその人たちから権利を奪うことをよしとするようになる。
③ 各人のおかれた境遇の平等が進むにつれ、人は他者との差異に敏感になり、万人の完全な平等を追い求めるようになるが、同等の人間に支配されるのを忌避するあまり、強大な権力の支配に進んで身を委ねるようになる。
④ 民主化が進展して各人の境遇が平等になると、人は自己と他者の差異を手がかりにして、自分と同等の人だけを自分の隣人として認めるようになり、権力者に特権が集中することになっても気にならないようになる。
① 持続可能な開発(発展)という理念によれば、現在世代の人々は自分たちの欲求の充足をできるだけ抑制し、将来にわたって高い経済成長率が確実に維持されるよう努めなければならない。
② 持続可能な開発(発展)という理念によれば将来世代の人々の享受すべき利益を損なうことなく、しかも現在世代の人々の欲求をも充足させるような開発が目指されなければならない。
③ 世代間倫理という考え方によれば、現在世代の活動とまだ生まれていない将来世代の活動とは互いに密接に絡み合っているので、両世代の人々は相互に責任や義務を負わなければならない。
④ 世代間倫理という考え方によれば、現在世代はまだ生まれていない将来世代に対して責任を負う必要はなく、自分の世代の問題については同世代の人々の間で責任を分担しなければならない。
① | a | 超越者 | b | 権威主義 | c | 工 作 |
② | a | 超越者 | b | 権威主義 | c | 遊 び |
③ | a | 超越者 | b | 全体主義 | c | 工 作 |
④ | a | 超越者 | b | 全体主義 | c | 遊 び |
⑤ | a | 単独者 | b | 権威主義 | c | 工 作 |
⑥ | a | 単独者 | b | 権威主義 | c | 遊 び |
⑦ | a | 単独者 | b | 全体主義 | c | 工 作 |
⑧ | a | 単独者 | b | 全体主義 | c | 遊 び |
① ボードリヤールによれば消費社会のなかで人々は、メディアから提供される情報を手がかりにしながら、もっばら有用性の観点から商品を購入し、ただ大量に消費することそれ自体を目的としている。
② リップマンによれば、人々はメディアの情報から一定のイメージを思い浮かべ、それに従って現実を理解しているので、メディアによって情報が意図的に操作されると、世論が操作される危険がある。
③ ブーアスティンによれば現代のメディアが提供しているのは、物語としての迫真性をそなえた「本当らしい」出来事にすぎず、視聴者の側はメディアから流される情報に関心をもたなくなっている。
④ マクルーハンによれば近代社会では活字メディアが支配的だったが、20世紀に入って映画やテレビのようなメディアがそれに取って代わった結果、人間の感覚や想像力は貧困なものになっている。
① Aは、テクノロジーの力を借りて優れた芸術作品を生み出すことは難しいと考える。また、Aによれば芸術作品の優劣を左右するのはもっばら作り手であり、多くの受け手は作品を消費する存在にすぎず、そうした受け手の受動的な心性を助長するメディアは過信すべきではない。
② Aによれば、他者の手を借りずに自らの力でオリジナルな発想を獲得することこそが、優れた芸術作品の必要条件となる。それゆえ、Aは、個々人が自己の内面を見つめ、それを作品へと結実させることが肝心だと考え、他者と意見を交換し合うことには積極的な意義を認めない。
③ Bは、テクノロジ一のもたらす新たな表現を肯定し、そこに優れた芸術作品が生まれる可能性を見いだす。また、Bによれば、インターネットなどのメディアに流れる意見のなかには優れた意見もあり、そうした少数意見の持ち主こそが芸術の能動的な担い手になることができる。
④ Bによれば、たとえ他者の発想を借りたとしてもオリジナルな芸術作品を生み出すことは可能であり、むしろ他者の力を借りることで芸術の可能性は拡がっていく。また、Bは、ある作品が真の芸術と言えるかどうかについては、多くの人々の意見を集約することで判定できると考える。
設 問 | 正 解 | 配 点 |
---|---|---|
問6 | 3 | 3 |
問7 | 2 | 3 |
問8 | 6 | 3 |
問9 | 2 | 3 |
問10 | 1 | 2 |
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