2017年大学入試センター試験問題



倫理・政治・経済 解答 第3問 問1~3正解

第 3 問 
次の文章を読み、下の問い(問1 ~ 7)に答えよ。(配点 18)

 

学問のあり方として、文系と理系はおのおの独立したものだと考えてはいないだろうか。だが、a 古代ギリシア ・ ローマ において、生き方の探究者と自然の探究者はともに哲学者と呼ばれた。近代以降も西洋では、自然の研究との密接な関係のなかで人間の精神や社会が考察されてきたのである。その流れを追ってみよう。人文主義者や b モラリスト の活躍にみられるように近代思想の中心的な課題の一つに人間性の探究がある。この探究は、古典の研究に促される一方、新たに興隆した合理的な自然の研究から生じた課題も抱えていた。例えば機械論的自然観においては、人間も無限の宇宙の一点にすぎず、因果法則が支配する世界では自由も存在し得なくなるようにみえる。しかし、優れた自然科学者でもあったパスカルは、自然のなかでは(あし)のように弱い人間にも、思考によって宇宙を包む偉大さがあると説いた。また、カントは自然とは区別された道徳の領域において、自然界の必然性に(とら)われない自由の可能性を追求した。自然の秩序のなかで精神を独自に働かせる人間像が打ち出される一方、自然界と同様の法則性を人間の社会や歴史にも発見しようとする思想もある。エンゲルスはマルクスとともに、歴史にも法則的説明を与え、富の c 不平等 を告発する社会主義思想を「空想から科学へ」と進展させることを試みた。また、コントはd 神学 や形而上学に訴えずに社会を含む全事象に法則を見いだす実証的段階に至ることが人類の進歩だとした。自然の変化も人間の歴史も一様に法則的に捉えるような見方に対して、自然と人間のより直接的な関わりに目を向けようとする動きもある。ベルクソンは法則主義的・機械論的な見方とは異なる、 e 有機体や進化に注目する自然観 に基づいて、より直観的な仕方で、人間の生命のあり方を把握しようとした。また、 f 現象学 においては、世界をもっばら自然科学的に捉えようとする姿勢を見直し、日常的な生活経験における自然とのより具体的な接触に立ち返ることが目指された。このように人間の精神や社会をめぐる知の探究は、自然をめぐる探究にそのつど応答しながら進展してきた。私たちも、文系・理系の区別に囚われず、幅広い視野に立って、自然と関わりつつ生きる人間を探究していく必要があろう。

 

問1 下線部 a に関連して、古代ギリシア・ローマにおける哲学者についての記述として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① ヘラクレイトスは、万物の根源を火であるとしたうえで、「万物は流転する」と唱え、その絶えず変化する様子に法則性は認められず、調和した秩序は見せかけのものにすぎないと主張した。

 

② パルメニデスは、論理的思考に基づいて、在るものは常に在ると説き、世界における変化や生成は見かけだけの現象にすぎず、存在するものはただ一つであって、生成も消滅もしないと主張した。

 

③ プラトンは、この世に生まれた人間の魂を、感覚の世界に囚われ、イデアを忘却してしまったものと考え、イデアの世界はいかなる手段によっても知ることができないとする二世界説を唱えた。

 

④ マルクス・アウレリウスは、ローマ皇帝であると同時に、自らも哲学を修め、この世の現象は原子の不規則な動きによって構成されているという原子論の考えを発展させた。

 

問2 下線部 b に関して、モラリストを代表する人物にモンテーニュがいる。彼の思想の説明として最も適当なものを次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 人間は、「私は何を知っているか」と問い、謙虚に自己吟味を行うことによって、自らに潜んでいる偏見や独断から脱することができる。

 

② 人間は、単に行為するだけにとどまらず、行為の正不正に関する道徳的判断をも下す存在だが、この判断は知性ではなく感情の働きである。

 

③ 人間は、生の悲惨さを自ら癒すことができないために、娯楽や競争などの気晴らしに逃避して、気を紛らわそうとする。

 

④ 人間は、自由意志に従うと「堕落した下等な被造物」にもなり得るため、自由意志の上位に信仰をおくことによって正しき者になる。

 

問3 下線部 c に関連して、富の格差をはじめとする様々な不平等を思想家たちは 問題にしてきた。 次の ア ~ ウ は、そうした思想家たちの説明であるが、それぞれ誰のことか。 その組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア 敬虔(けいけん)なキリスト教徒にして人文主義者(ヒューマニスト)である立場から、金銭や富が人間よりも大切にされる社会を批判し、貨幣や私有財産のない理想社会を描く作品を発表した。

 

イ 男性優位の文化・習慣が女性に特定の生き方を強いていることを明らかにし、「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」と主張して、以後のフェミニズム運動に影響を与えた。

 

ウ 自由競争によって生じる所得や地位の不平等は、社会の最も不遇な人々の境遇の改善につながる限りで認められるとする格差原理を主張して、公正としての正義を構想した。

 

トマス ・ モア ボーヴォワール ロールズ
トマス ・ モア ボーヴォワール サンデル
トマス ・ モア シモーヌ ・ ヴェイユ ロールズ
トマス ・ モア シモーヌ ・ ヴェイユ サンデル
サン=シモン ボーヴォワール ロールズ
サン=シモン ボーヴォワール サンデル
サン=シモン シモーヌ ・ ヴェイユ ロールズ
サン=シモン シモーヌ ・ ヴェイユ サンデル

 

設 問 正 解 配 点
問1 2 3
問2 1 2
問3 1 3

 

 

 

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