2017年大学入試センター試験問題



倫理・政治・経済 解答 第1問 問1~5正解

第 1 問
以下は、大学生 A と B の会話である。これを読み、下の問い(問 1 ~ 5)に答えよ。(配点 14)

 

 

A:最近話題の映画を(み)に行ったけれど、命の尊さっていうテーマはいいのに、中身はいろんな名作を継ぎ接ぎしただけで、がっかりしたなあ。

 

B:継ぎ接ぎ自体は悪くないと思うよ。何をどこから選んでくるのか、それをどうアレンジするのか、そのアイディア自体はオリジナルなんだから。

 

A:それでも、他人のアイディアに頼っていることには変わりないよ。できあいのアイディアに頼らずに自力で頑張った人間だけが、しっかりした自己を確立することができる。そういう人が a 芸術家 こなれるんだと思うな。

 

B:個人の力を過信しているなあ。使えるものは何でも使うべきだよ。例えば、映像でもサウンドでも、テクノロジーの力を借りれば、表現の幅も(ひろ)がるしね。
A:規格化されたテクノロジーに頼っていたら、型にはまった発想にしかならないよ。その現実から b 逃避 していたら、真の芸術なんて生まれないよ。

 

B:真の芸術かどうかなんて、どうでもいいよ。いい作品だったら c インターネット なんかでも評判が拡がっていくだろうし、それで十分じゃないのかな。

 

A:ネットでは独り言をつぶやくか、仲間内で(な)れ合っているだけでしょ。自分と考えの違う人たちとも、意見をやりとりすることが大事だと思うな。

 

B:だからこそネットをもっと使うべきじゃないの?ネット上なら世界中の人と意見を言い合えるんだから、とっても d 民主的 で、いいと思うけれどね。

 

A:いや、ネットで流れている評判は、そう簡単には信じられないなあ。実際個性のない作品であっても、結構たくさんの人たちに受けたりするわけだから。

 

B:同じ世代なのに頭が堅いね。受け手を e 大衆 と見下すべきじゃないよ。作品に意味を与えるのは受け手だし、受け手の役割は思った以上に大きいよ。

 

A:たいていの人は、メディアから情報を受け取って消費しているだけだよ。

 

B:消費しているだけでも目は肥えていくし、優れた作品に刺激されて自分が作り手になることもある。そういう可能性をもっと考えてもいいと思うな。

 

問1 下線部 a に関連して、次の ア ~ ウ は、美術の分野で活躍した芸術家の作品と思想についての説明であるが、それぞれ誰のものか。その組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

ア 代表作「春」、「ヴィー ウナスの誕生」などで、躍動する生命と自由に生きる人間の美を生き生きと描き出し、人文主義の精神を体現した。

 

イ 坐禅で得た寂静の境地を表現したとされる山水図などの作品で、墨の濃淡だけで枯淡や幽玄の美を描き、水墨画を日本において大成した。

 

ウ ナチス ・ ドイツによる 一般市民への無差別爆撃を描いた壁画「ゲルニカ」を、発表し、人類の引き起こす戦争の悲惨さや残虐さを告発した。

 

セザンヌ 尾形光琳 ゴーギャン
セザンヌ 尾形光琳 ピカソ
セザンヌ 雪 舟 ゴーギャン
セザンヌ 雪 舟 ピカソ
ボッティチェリ 尾形光琳 ゴーギャン
ボッティチェリ 尾形光琳 ピカソ
ボッティチェリ 雪 舟 ゴーギャン
ボッティチェリ 雪 舟 ピカソ

 

問2 下線部 b に関連して、防衛機制としての逃避に当てはまる事例として最も適当なものを、次の①~④のうちから一つ選べ。

 

① 本当は好意をもっているクラスメートに、わざと意地悪なことを言ったり、無関心を装って冷たい態度を取ったりする。

 

② 溺愛していた一人息子が海外留学に出かけてしまって寂しくなった夫婦が、代わりに小犬を飼うことで心の隙間を埋めようとする。

 

③ 自分がいつまでもレギュラー選手になれないのは、自分のせいではなく、選手の実力を把握できていない監督のせいだと考える。

 

④ 部活動が苦痛になってきた生徒が、普段は何ともないのに部活動の時間が近づくと体調を崩し、このところ部活動を休んでいる。

 

問3 下線部 c に関して、次の図は、平成25年の1年間にインターネットを利用した成人について、世代別利用目的・用途をまとめたものである。図から読み取れることとして最も適当なものを次ページの①~④のうちから一つ選べ。

 

① 当てはまると回答された割合を表す数値は、すべての世代で、項目エが最も低く、2番目に低いのが項目 ウ、3番目が項目 イ であり、項目 ア が最も高い。 このことから、いずれの世代でも、遊び・娯楽以外でインターネットを利用する傾向が強いと言える。

 

② 当てはまると回答された割合が最も高い項目 ア と最も低い項目 エ の間の数値の差は、20~29 歳、30~39 歳、40~49 歳、50~59 歳、60 歳以上の順に 大きくなっていく。 このことから、世代が高くなるにつれて、インターネットの利用目的・用途が特定の項目に集中していくと言える。

 

③ 40~49 歳、50~59 歳、60 歳以上のいずれの世代でも、項目 ア を除き他の 3 項目の数値が 50 %未満である。 このことから、これら三つの目的・用途での利用者の割合が少ない 40 歳以上の各世代でも、インタ ーネット利用者の半数以上が電子メールを利用していると言える。

 

④ 30~39 歳、40~49 歳、50~59 歳、60 歳以上の世代では、項目 イ の数値と項目 ウ の数値が、いずれも項目 エ の数値の2倍以上となっている。 このことから、30 歳以上の各世代では、インターネット利用者の間で、芸術や社会の動向に注目する傾向が強いと言える。

 

問4 下線部 d に関連して、民主化と平等の進展がもたらす問題点について政治思想家トクヴィルが論じた次の文章を読み、その内容の説明として最も適当なものを、下の①~④のうちから一つ選べ。

 

境遇がすべて不平等であるときには、どんなに大きな不平等も目障りではないが、すべてが斉一ななかでは最小の差異も衝撃的に思える。完璧に斉一になるにつれて、差異をみることは耐え難くなる。平等への愛着が平等そのものとともに増大するのは、だから当然である。…民主的な国民は、こうして最小の特権にも憎悪の念を募らせつづけ、これに反対せずにはいられない。しかし、奇妙なことに、この憎悪の念に後押しされて、あらゆる政治的権利が国家の唯一の代表者の手に次第に集中するようになる。この主権者(権力者)は当然あらゆる市民のうえに立つ存在であり、いかなる市民の嫉妬をかうこともない。同等の者たちから特権を奪って、それをすべてこの主権者に預けるのを、誰もがよしとする。民主的世紀の人間は、自分と同等の隣人に従うことに、極度の嫌悪感を覚えざるを得ない。

(『アメリカのデモクラシー』より)

 

① 各人のおかれた境遇の平等が進むにつれ、人は他者との小さな差異に拘泥し、自分と異質な人を憎悪して視野から排除するようになるが、自分自身が権力者に支配されること自体は、ことさら疑問に思わないようになる。

 

② 民主化が進展して各人の境遇が平等になると、かえって人は他者との差異が気になり、自分以外の人が自分と同等であることを憎悪するようになるので、権力者がその人たちから権利を奪うことをよしとするようになる。

 

③ 各人のおかれた境遇の平等が進むにつれ、人は他者との差異に敏感になり、万人の完全な平等を追い求めるようになるが、同等の人間に支配されるのを忌避するあまり、強大な権力の支配に進んで身を委ねるようになる。

 

④ 民主化が進展して各人の境遇が平等になると、人は自己と他者の差異を手がかりにして、自分と同等の人だけを自分の隣人として認めるようになり、権力者に特権が集中することになっても気にならないようになる。

 

問5 下線部 e に関して、次の文章は、大衆社会をめぐる問題について説明したものである。文章中の

に入れる語句の組合せとして正しいものを下の①~⑧のうちから一つ選べ。

 

19世紀以降にデモクラシーが拡大するに伴って、大衆社会をどう評価するかが思想上の課題となる。例えば、平均化・画ー化された人間に

を対置したキルケゴールは、大衆社会批判の先駆けの一人でもあろう。彼は、世間の風潮に流される生き方を(しりぞ)け、人は究極的には神の前の

として生きなければならないと考えたのだった。一方、20 世紀にはフランクフルト学派によって、ファシズムを支える大衆の

的な性格(パソナリティ)が問題視されたが、それと同時に娯楽映画やポピュラー音楽などの大衆文化も、こうした状況を助長するものとして批判された。アドルノらによれば、規格化された大衆文化を漫然と消費している限り、人間の意識は画らだ。とはいえ、ホイジンガの言うように

に文化の根源があるのだとすれば、芸術活動を一切排除した生もまたあり得ない。大衆社会状況のもとで芸術文化の可能性を探ることは現代の重要な課題の一つだと言えよう。

 

a 超越者 b 権威主義 c 工 作
a 超越者 b 権威主義 c 遊 び
a 超越者 b 全体主義 c 工 作
a 超越者 b 全体主義 c 遊 び
a 単独者 b 権威主義 c 工 作
a 単独者 b 権威主義 c 遊 び
a 単独者 b 全体主義 c 工 作
a 単独者 b 全体主義 c 遊 び

 

 

設 問 正 解 配 点
問1 8 3
問2 4 2
問3 3 3
問4 3 3
問5 6 3

 

 

 

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